月曜日, 10月 30, 2006

映画「砂の器」

映画館で鑑賞中に自然と涙が溢れ出てしまい数分間止まらなかった経験が2回だけある。滅多に映画を見ない人間だが、イタリア映画「ひまわり」と松竹・橋本プロ製作の「砂の器」の2作品だけは、あるシーンで決まって涙が溢れ出てしまう。ソフィアローレンがやっとの思いで捜しあてた恋人マルチェロマストロヤンニと再会した瞬間、列車に飛び乗って離れようとするシーン。今西刑事役の丹波哲郎が容疑事実を説明し出すと同時に始まる回想シーンで、本浦千代吉と息子秀夫が吹きすさぶ風の中旅立っていくシーン。芥川也寸志の胸迫る感傷的な音楽とハンセン病という背景がない交ぜになって涙腺が全開になってしまう。千代吉役の名優「加藤嘉」の演技は他の追随を許さないものだ。療養園で生き長らえていた千代吉と捜し出した今西刑事が面会するシーン。和賀英良の写真を見せ秀夫ではないか?繰り返し尋ねる今西刑事に、かぶりを振り知らねぇ知らねぇと云い張る千代吉。とうとう泣きながら崩れ落ち認めてしまう千代吉。重いこの映画のもう一人の主人公は千代吉と云っても云い過ぎではない。野村芳太郎監督の「砂の器」にかける強い思いが全編伝わってくる。封切り32年後の今年、今西刑事がこの世を去った。今一度鑑賞したくなる名作である。

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