土曜日, 11月 04, 2006

ゼロの焦点


 松本清張「ゼロの焦点」を読んだ。北陸の冬、金沢、羽咋、七尾、和倉が舞台である 。陰鬱な北陸の冬の情景描写が印象に残った。新婚間もない夫が突然失踪する始まりは、当時は斬新な発想で話題を呼んだことだろう。夜行列車で東京と金沢を行き来する場面や、婦人の服装描写が大半和服である事など、昭和33年という時代背景が感じられて興味深かった。
 金沢、輪島、名倉には真冬一度訪れたことがある。鈍重な雲が立ちこめ塞ぎ込みそうな空と荒々しい日本海を目にして、この地方の生存の厳しさが伝わってきた。和倉だけは穏やかな海が正面に広がっていて、林立する温泉ホテル群に圧倒された思い出がある。いずれにしろ、冬の北陸の鬱とした気候は、この作品の舞台にはぴったりである。
 

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